2.2.1 商標法上の「商標」の意義
商標法2条は、「商標」を
「人の知覚によつて認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるもの(以下「標章」という。)であつて、次に掲げるものをいう。
一 業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をするもの
二 業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用をするもの(前号に掲げるものを除く。)」
と定義しています。
この定義によれば、2024年6月時点で政令で定められていない、におい、味覚等については、たとえ自他商品識別能力を有するとしても商標の定義に該当しません。したがって、商標の機能を満たし、社会通念上一般に考えられている商標概念あっても商標法上は商標ではないことになります。
一方、商品にその商品の普通名称(例:ガムの箱に記載されている「ガム」の文字)や検定合格品であることを示す認証マーク等は、自他商品識別機能を有しなくても、文字標章として商標に含まれることになり、商標法上の「商標」に該当します。ただし、これらの文言のみを商標登録出願しても、普通名称、商品の品質等のみからなる商標として拒絶されるのが通常です(法3条1項)。
したがって、現行法2条の商標の定義は、商標登録によって保護することができる商標を定義しているだけであり、取引社会で一般に使用されている商標全般を定義しているわけではありません。
2.2.2 ブランドの意義
商標法上の「商標」を英訳すると“Trademark”(トレードマーク)です。
それとは似て非なる概念として“Brand”(ブランド)というものがあります。日本語に訳すと、「銘柄」です。
アメリカ・マーケティング協会(AMA: American Marketing Association)はブランドを「個別の売り手もしくは売り手集団の商品やサービスを識別させ,競合他社の商品やサービスから差別化するための名称,言葉, 記号,シンボル,デザイン,あるいはそれらを組み合わせたもの」と定義しています。要するに自社の商品・サービスを、他社の商品・サービスと区別し、識別するための総称です。
商標法上の「商標」と異なり、自他商品識別機能がその定義に含まれています。したがって、先の例でのガムの包み紙に記載されている「ガム」という文字や「甘み控えめ」という文字のような自他商品識別機能を有しないものはブランドからは除外されます。 消費者はブランドを製品構成の重要な要素と考えているため、ブランド化(ブランディング)によって製品に価値を付加することができます。
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